折紙に戀文をしたためる

毛布を抱いて眠る姿はいつみても寂しげな幼子のようで、私はほんのすこし悲しくなる(かつて置き去りにした何かをそこに投影しているのかもしれない)。頭を撫でると薄く眼を開けて「おはよう」より先に私の名を口にする君、まるで主人の帰りを待つ犬のようで可愛いと思うけれどそれを可愛いと思う自分はきっと冷酷なのだろう。

可愛くて可哀想な私の片割れ。ただしさもあやまちも全部ふたつの身の内で撹拌されて最早原型を留めていない。シルヴァスタインの絵が脳裏をさまよう。可愛くて可哀想な私の片割れ。互いの影に抱き竦められて駆け出すことさえかなわない。

アルコールと流しこまれる欲でひたひたになった頭はそれでも理性を手放そうとはせず、ぼやけた視界の真ん中で動く身体に半分を受け渡そうと試みる。何をみているのかわからない眼で、迷子になったひとの顔で私のなかみを貪食する君の渇きはいつか満たされるだろうか。どこかの海の底に"それ"があるのかもしれないと思うと私の未熟な胸は軽薄に軋むけれど、今はまだ君は私の海で溺れながらも泳ぎ続けてくれている。有限の円環の内側で、私たちがいま、確かに存在しているということについて思う。

私はひとを口説いたこともなければ気の利いた文句のひとつも覚えがないような不調法者ではあるけれど、私を寝室に誘っていいのは君だけ。私のなかにはいっていいのも君だけ。そう言葉にする私の矜持を、どうか査収して頂戴。